ENGLISH    |  

年報Lingua巻頭言/2006

(研究室年報「LINGUA」2006の巻頭言から)

今年は,春に前期課程10名,後期課程1名,研究生1名の新人が研究室に配属さ れました.新M1には3名の留学生を迎え,留学生数が合計9名とこれまでで最大 の人数になり,さらに国際色豊かになりました.内部から博士後期課程への進 学者がなかったのは初めてのことかも知れませんが,新しく後期課程に入学さ れた大山さんは日本語教師であり,彼女を中心に新しく言語教育勉強会を立ち 上げました.

修了生の数に比べて新M1の数が多かったこともあり,いよいよ学生室の許容範 囲を越える事態となってしまいました.年度の始めは,お隣の植村先生の研究 室に技術補佐員3名の方々のスペースをお借りしたのですが,いつまでもそう はいかないので,秋に,学生室の大幅なレイアウト変更を行いました.試行錯 誤の上で間取りを決め,全員を学生室のスペースに収めることができました. 開学以来のレイアウトであったあのY字型配置と決別し,低めのパーティション で各自のスペースを四角く囲うオフィスっぽい配置にしました.開放感には多 少欠けることになったかも知れませんが,学生諸君が今までより落ち着いて過 ごせるのではないかと,私自身は勝手に満足しています.

研究室のメンバーの協力を得てコーパスツールの開発を行なってきた科研費と 学術創成研究が昨年度で終わり,本年度から新たに日本語書き言葉の均衡コー パス(balanced corpus)の特定研究に加わることになりました.国立国語研究所 が中心となり,5年間をかけて日本語書き言葉の標準コーパスを構築するのが 目標ですが,我々が所属する班では,様々なタグ付けツールと支援環境を作っ ていくことになります.毎年シンポジウムを開催し,広く意見を募りながら, 言語研究の共通基盤データ・ツールに育っていくことができればと思っていま す.http://www.tokuteicorpus.jp/ にプロジェクトの活動が掲載され ていますので,意見や提案をいただけるとありがたく思います.

乾助教授が中心になって進めている照応解析・述語項構造解析・事態間知識の 獲得の研究が本年度は飛躍的に発展しました.これらの技術の応用として意見・ 評判情報抽出の研究も行なっています.照応解析に関する研究の一環として文 内照応と文外照応モデルを区別し,文内モデルに関して統語的な素性の利用を 提案した飯田君の研究がACL/COLING-2006でBest Asian NLP Paper Awardを受 賞しました.受賞発表の際に本人と乾氏が会場から一時退出しており,遅れて 現れるといハプニングがあり,ハラハラさせられました.これらの技術を援用 して学生諸君が作成してくれたレストランの評判情報検索システムのデモを21 世紀COEの最後のシンポジウムで行ないました.この研究には,7月に開催され たマルチメディア・分散・協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2006)において 野口賞を受賞しました.

2006年の研究室の活動費については,国立大学法人運営費交付金,21世紀COE プログラム,文部科学省科学研究費補助金(特定領域研究,基盤研究 (B),若手研究(B),特別研究員奨励費,基盤研究(A)(分担)),CREST(分担)から 援助をいただきました.また,日本電気(株), トヨタ自動車(株),(株)豊田中央研究所,松下電器産業(株),(株)富士通研究 所,SPSS(株),(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) より援助を いただきました.

皆様からのご支援,ご鞭撻に感謝するとともに,これまで通り,研究室の活動 について忌憚のないご意見をいただければ幸いです.

最後に,本年報の編集作業に当たってくれた学生諸氏にこの場を借りて感謝 します.

2007年2月27日
松本裕治