語彙意味論勉強会 (Lexical Semantics WG) の概要
照応勉強会と言い換え勉強会が2004年度後期限定でジョイントして活動します.
両者の研究分野に関係が深い語彙意味論の領域,とくに動詞にフォーカスして,書籍または関連する論文を持ち回りで紹介します.
We are going to focus on the linguistic analyses in the field of lexical-semantics which is very close to the topics of the constituted WGs: the apaphora resolution WG and the paraphrasing WG.
Activities on this WG will be reading a book or looking for papers.
Although our target language is Japanese at the present time, introducing constructive approaches in other language are also welcomed.
日時
- 時間: 木曜日, 15:15-
- 場所: A707
目次
活動内容
年内は,次の3冊の書籍の中から各自興味がある章を取り上げ,全員が前もって読んでくることを前提に議論を行ないます.
@book{ito:02, mbdid = 1335, editor = "伊藤 たかね", title = "文法理論:レキシコンと統語", publisher = "東京大学出版会", year = 2002, }
@book{kageyama:01, mbdid = 1184, editor = "影山 太郎", title = "日英対照 動詞の意味と構文", publisher = "大修館書店", year = 2001, }
@book{kageyama:96, mbdid = 247, author = "影山 太郎", title = "動詞意味論---言語と認知の接点", publisher = "くろしお出版", year = 1996, }
2004/12/09 文献紹介: takafu-h
- kageyama:01. 第3章 心理動詞と心理形容詞
(tooru-h) p.72 L2 「この種(経験者主語タイプ)の心理動詞は,通常の他動詞と同じように扱ってよく,・・・」 -> Q. 他動詞はヲ格(対象)が変化するものだが,経験者主語タイプの心理動詞ではヲ格(対象)によって 経験者がある状態になるものである.これらを同じように扱ってよいのか? p.82(33) a. The result surprised Ruth. b. Ruth was surprised at the result. について本書では,bはaの受身としている. -> Q. bはaの受身として考えるのではなく,p.87にあるように動詞から形容詞に派生したものと考えるほうがよいのでは?
2004/12/02 文献紹介: ryu-i
- ito:02. 第5章 非対格構造の他動詞 ---意味と統語のインターフェイス---
(takafu-h) BECOME BE ATは瞬間動詞, MOVE TOは継続動詞と, この二つは互いに違うものである. しかしMOVE TOに源泉する(source)を導入しMOVE FROM TOとすることで, その違いが消えてしまう. 例えば「授ける」は [x CONTROL[y MOVE FROM x TO z]] と表現することができる. しかし「授ける」は知識や物を瞬間的に与えることも可能であるため, MOVE TOの性質が継続か瞬間か曖昧になってしまう. ->Q. このような曖昧性を解決するためにはどうすればよいか?
2004/11/18 文献紹介: nozomi-k
- ito:02. 第4章 形容詞から派生する動詞の自他交替をめぐって
(ryu-i) Q. 動詞化接辞「める,まる」が付く動詞のLCSにCONTROLが付くか否かの判断はどうやって行うのか? p.106 より抜粋 (33)a. 5分で/5分間身体を暖めた. b. 5分で/*5分間身体が暖まった. ...(31a)が使役(CONTROL)と状態変化(BECOME)の両方を含むのに対して,(31b)はBECOMEのみを含むので 継続の解釈ができないためである. --- 「5分間」 「ている」 LCS 暖める(他) o 進行中 [x/Event]CONTROL[y BECOME[y BE at-([+Deg]State)]] 暖まる(自) x 結果の状態 [y BECOME[y BE at-([+Deg]State)]] 弱める(他) o 進行中 [y CONTROL[y BECOME[y BE at-([+Deg]State)]]] 弱まる(自) o 進行中/結果の状態 [x CONTROL[y BECOME[y BE at-([+Deg]State)]]] 文献の内容は上のようにまとめられるが,「5分間」を用いた言語テストはCONTROLを判断するためのものではない. (「5分間」が付くことが使役であることの判断基準となるのはおかしい) ->では何をもってCONTROLが付くか否かを判断するのか?
2004/11/11 文献紹介: tetsu-ta
- kageyama:96. 第4章 自動詞と他動詞 ---使役主の取り付けと取り外し--- (4.2 日本語の自動詞と他動詞)
(nozomi-k) 日本語の自他交替のメカニズムについて. 有対動詞について他動詞と自動詞のどちらを基本とするか. --- 1. サ変動詞の自動詞と他動詞の区別について 区別は困難である.例えば,p.203で「発生する」は自動詞とあるが,自他両用. --- Q. サ変動詞の自他両用は他動詞→自動詞というのは本当か? → open question
2004/11/04 文献紹介: michikon
- kageyama:96. 第4章 自動詞と他動詞 ---使役主の取り付けと取り外し--- (4.1 英語: 能格動詞と非対格動詞)
(atsush-f) 今回のポイントは,能格動詞と,使役構造からの反使役化. 次の2点を考えた. ---- Q.能格動詞の基本は自動詞か他動詞か? p.140では「他動詞 (使役構造) からの反使役化によって自動詞が作られる」と述べられている. しかし,nativeのeric-nによれば,自動詞に使役構造を付ける方が自然だということ. ---- Q.能格動詞をx=yとすることは,yが意志性を持っているということなのか? p.144では「(自動詞の主語が) 使役と言うよりもその本来的な性質のために状態変化に責任を持っている」と述べられている. しかし,反使役化が[y CONTROL]を残すと「おのずと/難なく」という意味のみがサポートされる. "The window breaks."の"window"は本当にCONTROLできるのか?
2004/10/21 文献紹介: atsush-f
- kageyama:96. 第2章 語彙概念構造 ---動詞の意味タイプ---
- 研究室限定レジュメ (PostScript)
(atsush-f) 今回は,非能格自動詞,非対格自動詞やそれを区別する外項,内項の定義を踏まえ, LCSの基本要素について復習した.議論のポイントは次の3点. ---- Q.この節で挙げられているLCSの分類やテストは他の言語にも共通か? - 日本語には,英語にはない脱使役化という派生がある. - 英語の二重目的語動詞における交替 (Dative alternation / Benefactive alternation) は日本語にはない. ---- Q.どこまで細かく区別すべきか? 上の英語の交替は,1つのLCSから異なるリンキングルールで生成されるのか? あるいは,それらは語義としては同じだが,異なるLCSで表現するのか? Mary wrote to John. / This pen writes well. などの中間態構文も別のLCSで表すのか? 異なるLCSで表すなら,それらを「派生」なりの関係で結び付ける必要があるのでは? ---- Q.どこまでを動詞の項と考えるか? Beneficiary は動詞の項と考えるのか? Theme に依存して Beneficiary が要求される度合いが異なる. e.g. `present' → 必要,`house/car' → そうでもない 動詞レベルで異なる構造を用意すべきか,それは Theme となる要素にしたがって動的に変形するものなのか. これまでの議論では,動詞のみを,しかも典型的な用法のみを見てきたので,明確な答えはない.
2004/10/07 キックオフ
(atsush-f) スケジューリング,文献の選考,割り当てを行ないました.