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年報Lingua巻頭言/2010

(研究室年報「LINGUA」2010の巻頭言から)

2010年の一番大きな出来事は,乾健太郎君の東北大学教授への栄転でした. 2001年秋の非常勤としての赴任から数えてほぼ10年近くの間,沢山の学生の面 倒をきめ細かく見て,育てていただきました.同4月から渡邉陽太郎君が助 教として,Eric Nichols君が研究員として,井之上直也君と水野淳太君がそれ ぞれ博士後期課程学生,特別研究学生として東北大学に移りました.新しい地 で自然言語処理の拠点を作られることに期待しています.

4月には,新保仁君が准教授に昇進,小町守君を助教として採用しました. 新規学生として,春秋両方の入学者を含めて,博士後期課程4名,博士前期課程 12名,研究生4名を迎えました.

この年は,博士取得者を多く輩出しました.3月には阿部修也君,Eric Nichols君,木村学君,小町守君,渡邉陽太郎君の5名が学位取得し,それぞれ の道を歩み始めました.9月と12月には既に指導認定退学していた菅野亜紀さん と橋本喜代太君が論文提出による学位取得しました.

坪井祐太君が学位論文で行った研究に対して情報処理学会論文賞を,小町守君 が同学会の山下記念研究賞を受賞しました.その他,大会発表賞や研究会奨励 賞など,多くの学生が様々な賞を受賞した年でもありました(詳しくは5.2節を ご覧下さい).

これまで続けてきた様々なプロジェクト(特定研究「日本語コーパス」,情報通 信機構受託研究「言論マップ」,文部科学省「ライフサイエンス統合データベース」)が今年度最後の年を迎えました.そのためもあり,新しい研究方向を模 索する年でした.統計的言語処理が台頭して約20年,その間に,対象とする言 語データ,言語解析基盤,言語処理応用,いずれの面においても当時とは比較 にならない拡がりとノウハウをもつようになりました.自然言語処理の重要性 への認識はこれまで以上に高まっており,益々やりがいのある分野であること を感じる年でもありました.

2010年の研究室の活動費については,国立大学法人運営費交付金,特別教育研 究経費(アンビエント環境知能研究創設事業),文部科学省科学研究費補助金(特 定領域研究,基盤研究(B),基盤研究(C),特別研究員奨励費),文部科学省統合 データベースプロジェクト,情報通信研究機構(NiCT)から援助をいただきまし た.国立国語研究所,国立情報学研究所からは,共同研究プロジェクトでの支 援をいただきました.また,(株)NTTデータ,KDDI研究所,NTTコミュニケーショ ン科学基礎研究所より様々な形で援助をいただきました.関係者各位に感謝し ます.

本年報を編集している最中(3/11)に東北関東大震災が発生しました.毎日明ら かになる被災地からの情報に胸が痛くなるばかりです.現在は,西側から物資 を送ることもままならない状況です.多くの知人・友人や財産を失われた方た ちがお互いを思いやり協力される姿,自分を省みず他の人々のために働かれる 姿を見て,日本とは何と清らかな人々の国かとあらためて感動しています.

最後に,本年報の編集作業に当たってくれた学生諸氏にこの場を借りて感謝し ます.

2011年3月17日
松本裕治